近年中国建築界で富に頭角を現してきたのがMAD アーキテクツだ。いやむしろグローバルでアップ&カミング(新進気鋭)な若手建築家集団というべきだ。何しろ完成した建築や進行中の作品が世界的な広がりを見せているのがすごい。中国は言うまでもなく、カナダに完成した「アブソリュート・タワーズ」やモンゴルの「オルドス・ミュージアム」をはじめ、ローマ、パリ、ビバリー・ヒルズ、日本、シカゴなどに作品がグローバルに浸透していくのは見応えがある。
2004年に創設されたMADはまだ若干40歳になったばかりのマ・ヤンソンを中心に、30代の早野洋介とダン・チュンという3人のパートナー制。北京とロサンゼルスの事務所に約75名のスタッフを抱える若手建築事務所だが、その名は世界的に轟いている。彼らは東洋的自然観を現代的に解釈した未来的・有機的・技術先進的デザインを追求している。住民の精神的かつ感情的なニーズを基礎にした未来都市のヴィジョンである”山水都市”のデザイン哲学を中核にして、人間・都市・環境の調和を創出するのがMAD アーキテクツの狙いだ。
若手事務所ながら大規模作品が多いのもMADの特徴である。先の「オルドス・ミュージアム」や「アブソリュート・タワーズ」は初期に国際コンペに勝った作品だが、共に延床面積が40,000uもあり、特に後者は2本の超高層タワーだが、それぞれが170m/45,000uと150m/40,000uという巨大スケール。その後完成した「中国木造彫刻美術館」は約23,000uだが、現在工事中の「朝陽公園プラザ」は223,000uもあるスーパー・プロジェクト。
若手アトリエ派のMADがこうした大規模作品を手掛けられるのは、中国の経済発展による追い風もあろうが、やはり初期の国際コンペに勝利した自信と実力が効いているのは否定できまい。多数の受賞をしてきたマ・ヤンソンが、昨年は世界経済フォーラムから「2014ヤング・グローバル・リーダー」のひとりに選ばれたのも頷ける。
2010年10月に印刷工場を改装したMADアーキテクツの北京事務所を訪問した。木造小屋組を露わにした若手建築事務所は活気に満ちて、多数のプロジェクトの模型を見学させてくれた。あれから5年、MADは着実に伸びてきた。MADはよりグローバルな建築事務所へと発展するだろうし、そこにいる早野パートナーの存在もわれわれ日本人にとっては嬉しい限りだ。
»MAD アーキテクツ

文:淵上 正幸(建築ジャーナリスト)

  • 1.オルドス・ミュージアム

  • 2.アブソリュート・タワーズ

  • 3.中国木造彫刻美術館

  • 4.ハルピン・カルチャー・アイランド

  • 5.北京朝陽公園プラザ

  • 6.ローマ・ボンコンパーニ集合住宅

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